私たちが普段行っている素材をカットして並べる編集作業。
みなさんは何を意識していますか?
今回は動画編集の根本的な部分のお話をしようと思います。
編集とは
編集には大きな役割が2つあります。
それは
- 文脈を与える
- 違和感をなくす
ということです。
文脈を与える
映像は何かを伝えるものです。
それはストーリーであったり情報であったり様々ですが、それを伝えるために素材を選定し、繋ぎ合わせる作業が『編集』です。
撮影した素材は、単独では文脈をもっていません。
カットとカットが意味をもって繋がることで初めて文脈が与えられます。
例えば
- 抱き合う男女
- 赤ちゃん
の2カットがあるとします。
映像単独では文脈を持ちませんが、カットとカットが繋がると、
『男女が結ばれ、子どもが産まれました』というような文脈になると思います。
編集構成の基本は言葉であることがわかりますね。
言葉を並べて文章をつくるように、映像もカットを並べて「文章化」するんだね
カットとカットが意味をもって繋がることで初めて文脈が与えられると先述しましたが、言い換えるとカットの繋がり次第で意味が変わってくるということになります。
『モンタージュ理論』をご存知でしょうか。
モンタージュ理論は1920年代にソビエトの映像作家エイゼンシュテインによって確立された概念です。映画が作られたばかりの頃は音声がなかったため、いかに映像だけで意味を伝えるかが研究されていました。
モンタージュは「組み合わせ」という意味があり、その本質はカットとカットを組み合わせると新しい意味が生まれるという創造効果にあります。
例えば
- 泣いている女性
- 抱き合う男女
- 赤ちゃん
の3カットがあるとします
それぞれ違う情景のカットが①→②→③の順で繋がると
『不幸な女性が男性と結ばれ赤ちゃんが生まれた』
という物語が生まれます。
では②→①→③の順に入れ替えるとどうでしょうか?
『彼がいなくなってしまい悲しむ女性に赤ちゃんが生まれる』という切ない物語になります。
③→①→②の順だと『赤ちゃんが大人に成長し、苦難を乗り越え、運命の人と結ばれる』という感動的な物語になります。
カットの組み合わせ方で、さまざまな意味を生み出すことができるモンタージュは、映像を芸術に昇華させる代表的なテクニックといえます。
このように、素材をどのように繋げるかで文脈は変わります。何を伝える動画なのかを明確にして、素材を厳選し、意味をもって繋げることで正確に伝わる編集をしましょう。
違和感をなくす
もうひとつの役割は違和感をなくすこと。
私たちが日頃見ているテレビは、夢中になって見ることができます。
映画やドラマは自分が主人公になったような没入感を感じることもあります。
このように映像に夢中になれるのは、映像に違和感がないからです。
もし、あなたが視聴している映像が、音声が小さすぎたり、画面が暗かったらどうでしょうか?
見えづらいな
聞きづらいな
と映像から意識が離れてしまいます。
これでは伝えたい内容が頭に入ってこないですよね。
撮影した生の素材をカットして繋げただけでは違和感が存在します。
『編集』はその違和感を見つけて、視聴者が見やすく・聞きやすく・気持ちよく映像を視聴できるようにしてあげることが大切です。
映像の違和感
- 画面が暗い
- 白とびしている
- 色がおかしい
- 同ポジ
- 繋がりが悪い
- カットが長いor短い
画面の明るさ・色の調整
カットごとに暗くなったり、明るくなると気になりますよね。シーンが変わったのかな?と勘違いも起きやすくなります。特に屋外で撮影したものだと太陽光の影響で明るさが変わりがちです。
また時間とともに光の色は変化します。
朝は色温度が高く光は青みがかっていて、日中は白色、夕方は色温度が低く光は赤みがかっています。
色温度・・光の色を温度表示したもの。肉眼では見えませんが光には実は赤味や青味の色があります。
このようにカットごとに明るさや色が異なる場合は、調整をしましょう。
ただし、時間の経過を表したい時やシーンが変わって印象を変えたい場合は別です。
同ポジを避ける
『同ポジ』とは同一ポジションの略で、画面の中に映る画が似ている状態を指す業界用語です。画が変わったのかどうか分かりにくく、メリハリを感じないことからあまり印象がよくない編集とされています。基本的に映画やドラマなどは同ポジの映像をつなげることはしません。
- どこが変わったのかわかりにくい
- メリハリがなく印象的でない
このような編集になることを避けるために、カット後の画は対象物のサイズや位置が違っている映像がくるようにします。
同ポジの例
ただし、1カメで撮影したインタビュー動画やYoutubeでは無言などの間をカットする為にジャンプカットを行います。
ジャンプカット・・映像の連続性を無視してカットとカットを繋ぎ合わせ、時間やアクションが急に飛んだような印象を与える編集手法
映像の繋がりを自然に見せる
動いている途中でカットを入れてしまい、動作の繋がりが悪いと違和感のある映像になってしまいます。違和感のないタイミングのところで、カットを入れるようにしましょう。
例えば
下の動画A・Bはどちらが自然に見えるでしょうか?
動作に着目してみてください。
Bは1カット目にコーヒーを飲み始め、2カット目にコーヒーを下ろしています。
『コーヒーを飲む』という行為が飛ばされているので、不自然に見えますね。
下の動画は1カット目と2カット目で走っている向きが変わっているので不自然です。
この2カットを繋げたい場合は、カットの間に女性が向きを変えて走ることになったきっかけがわかる映像が必要です。
カットの尺
カットの尺が短いと内容が分からなかったり、逆に長いとイライラしてしまいます。
感覚的な部分なので難しいですが、カットするタイミングは認識度で判断しましょう。
- 画が認識できるか
- 文字が認識できるか
編集画面上ではどうしても判断が鈍ってしまいます。フルスクリーンにして客観的に見て確認しましょう。
音の違和感
- 音が大きい
- 音が小さい
- 繋がりが悪い
- ノイズがある
音量の調整
BGMが大きすぎてナレーションが聞き取れなかったり、全体の音量が大きすぎたり小さすぎたりすると視聴者がデバイスの音量調節をする必要があり、ストレスになってしまいます。
そうならない為にも、適正な音量に調整することが大切です。
オーディオのピークメーターを確認し、音量を調節しましょう。
全体の音量の目安は-6dB 〜 -12dB。
0dB超えると音割れするので超えないようにしましょう。
音声とBGMがミックスされる場合はBGMは−20dB前後。
あくまで目安です。BGMはメインの楽器や声質によって変わりますし、SE(効果音)は音の種類が幅広いのとシチュエーションにも左右されるので実際に耳で聞いて調整することが大切です。
音の繋がり
音にも繋がりを意識することは大切です。
急にプツッと音が切れたり、唐突にBGMが切り替わると、聞いている人は違和感を感じてしまいます。
シーンの頭と終わりにフェードイン・フェードアウトを使うことで繋がりを自然にすることができます。
ドラマのシーン切り替えやCMが切り替わる時、音に注目してみてください。
映像よりも音が何フレか先にフェードアウトされているのが分かります。
音のノイズ
撮影時に注意していても、ノイズが入ることがあります。収録時に突発的に入ってくるノイズや環境音によるノイズなど種類は様々です。低減できるノイズは処理してあげましょう。
まとめ
ここまで基本の編集のお話をさせていただきました。
映像を感動的に仕上げるのも面白く仕上げるのも編集次第です。
ですが、基本的な編集ができていないと、そもそも伝えたいことが伝わらない映像になってしまいます。
大事なのは視聴者の目線に立つことです。
視聴者が見やすく・聞きやすく・気持ちよく視聴できるような編集を心がけましょう。
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